仕事等で有機溶剤や有害性のある化学物質を使用しており、挙児希望または妊娠した場合、
不妊あるいは母体や胎児への影響が気になりますよね。
私(脳外科医)も現在、有機溶剤を取り扱っています。
この記事では、妊娠と関係のある化学物質を知ることから注意点まで、わかりやすく説明します。
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有害性のある化学物質として妊娠と関係する項目
1 生殖細胞変異原性
ヒト生殖細胞に経世代突然変異を誘発する可能性。(奇形等)
2 生殖毒性
男女両性の生殖機能に対して有害な影 響を及ぼす作用または次世代児に対して有害な影響を及 ぼす作用。(妊孕性、妊娠、出産、授乳へ の影響等)
許容濃度等の勧告(2020年度)
産業衛生学雑誌 2020; 62(5) P217
に生殖毒性物質一覧を確認することができます。
化学物質の例
私が実際取り扱っている化学物質を抜粋します。
化学物質 | 管理濃度 | 許容濃度 (日本産業衛生学会(2020年)) | 生殖細胞変性原性 | 生殖毒性 |
キシレン | 50ppm | 50ppm | 区分外 | 第3群 |
トルエン | 20ppm | 50ppm | 区分外 | 第1群 |
メタノール | 200ppm | 200ppm | 区分外 | 第2群 |
区分外:ある危険有害物質について分析した結果、どの区分にも該当しない場合
生殖毒性物質の分類:
第1群:ヒトに対して生殖毒性があることが知られている物質
第2群:ヒトに対しておそらく生殖毒性を示すと判断される物質
第3群:ヒトに対する生物毒性の疑いがある物質
女性労働者の母性健康管理と産業医 産業医科大学雑誌 2013; 35: 169-175
許容濃度等の勧告(2020年度) 産業衛生学雑誌 2020; 62(5): 198-230
扱っている有機溶剤には、定められた安全データシートがあります。まずはご自身の使用している物質について内容を確認しましょう。
国際化学物質安全カード(ICSC)、安全データシート(SDS)
http://www.nihs.go.jp/ICSC/
論文紹介
下記の論文は、職業柄有機溶剤に暴露している妊娠中の女性では、胎児奇形率と流産率が増加することを示したものです。 (JAMA 1999; 281: 1106)
要約
<方法>
・職業柄有機溶剤に暴露している125名の妊婦を妊娠初期から前方視的に追跡調査した。
・有機溶剤を取り扱う職業は、塗装業、インク関連、大工、化粧品関連、芸術家、研究者(学生)、化学者、獣医、洗車業、機能訓練士、葬儀埋葬業など。
・コントロールとして年齢、妊娠歴、喫煙歴、飲酒歴が同一な妊婦を選択した。
<結果>
・職業柄有機溶剤に暴露している妊婦では胎児奇形率が有意に増加した。(相対危険度13倍)
・胎児奇形は暴露症状(頭痛、目の痛み、呼吸器症状、呼吸困難など)のない方では皆無であったが、暴露症状のある方の16%に胎児奇形が認められた。
・職業柄有機溶剤に暴露している女性は、それ以前の妊娠での流産率が有意に高かった。
(46.2% vs.19.2%)
解説
・著者のグループは本論文以前にメタアナリシスによって、有機溶剤が胎児奇形と流産のリスク因子であることを報告している。(1998)
・本論文は、有機溶剤に関する初めての前方視的なコホート研究であり、より信憑性が高いデータと考えられる。
・本論文からは有機溶剤の暴露の程度が正確に把握できないが、7か月以上の暴露は7か月未満の暴露より有意に胎児機能不全を認められたと述べられている。
・有機溶剤は吸入により吸収され、胎盤を通過し、胎児に移行する。
・有機溶剤を取り扱う職種では、妊娠中の有機溶剤への暴露を最小限にする配慮(ドラフトチャンバー、換気など)が必要である。有機溶剤中毒予防規則という法律もあり半年毎の健康診断が義務づけられている。
まとめ
〇 長期間、高濃度の暴露は胎児(奇形、流産)に影響します。
〇 暴露の程度が小さければ大きな問題となりにくいです。
〇 職場環境の暴露はどうか、作業環境を見直しましょう。異臭や長時間暴露の可能性があれば上司と相談しましょう。
〇 取り扱いには、保護手袋、マスクを使用し、作業はドラフト内で行う、換気を行うなど、十分な管理下で行いましょう。
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