日常放射線業務をしており妊活で悩んでいる方へ
日常業務として放射線業務をしている場合、どうしても治療にあたりながらの妊活となりますが、妊活中や妊娠後の胎児被ばくの影響が心配ですよね。
放射線業務から一定期間離れる必要も出てきます。
本記事では、どの程度の被ばくが問題となるか、どういうことに注意すべきか、についてご説明します。
まず線量限度を確認しましょう
【実行線量限度】
女子:5mSv/3月
妊娠中である女子:本人の申し出等により使用者が妊娠の事実を知ったときから出産までの間につき、内部被ばくについて1mSv
【等価線量限度】
妊娠中の女子の腹部表面: 2mSv
放射線によって胎児に影響が出るとされる線量(しきい値)は100mGy
区分 | 期間 | 影響 | しきい線量 (mGy) |
---|---|---|---|
着床前期 | 受精 8日まで | 胚死亡 | >100 |
器官形成期 | 受精後 9~60日 | 奇形 | 100~200 |
胎児期 | 受精後 60~270日 | 精神発達 発育遅延 | >120 |
8-15週の器官形成期は最も放射線感受性が高い
業務(血管内治療を担当する術者被ばく)ではどの程度か
<X線管焦点―検出器間の距離が100㎝で防護板ありの場合>
術者の脳血管造影検査1回あたりの推定被ばく線量:約2μSv
術者の脳血管内治療1回あたりの推定被ばく線量:約11μSv
(参考文献:脳血管撮影、脳血管内治療時の術者被爆量の推定と防護板の位置による特性)
私は、週2-3回の血管造影室出入りをし、業務内容として、血管造影検査(術者)と、平均週1回頸動脈ステント留置術(術者)、週1回脳動脈瘤コイル塞栓術(主に助手)を1年間行った結果、0.9mSvでした。(防護板、放射線防護衣あり)
一例ではありますが、術者や助手としてこれだけの治療介入ですと、被ばく量としては、限度を超えていません。妊娠したからといって、全く治療を行ってはならないというわけではありません。
しかしながら、妊娠判明後はできるだけ放射線業務を避けることが望ましいでしょう。
線量限度を理解した上で、被ばくを必要最小限にすることが大事です。
具体例
先輩の場合:妊活に励みたいため、上司へ相談し、妊活中は全ての放射線業務から退きました。
私の場合:妊活中は通常通り血管内治療を行っていました。妊娠判明後は、血管造影室外での見学学習に努めました。当直業務での緊急撮影では治療に参加していません。安定期、どうしても必要な数回のみ、患者と一番遠い位置で助手として治療に参加しました。
まとめ
〇 器官形成期(特に8-15週)の放射線被ばくは可能な限り避ける。
〇 放射線防護を適切に行い、必要最小限の被ばくにとどめる。
〇 妊活の希望など一定期間放射線業務を離れることを検討したら、まずは上司へ相談する。
放射線防護を徹底する。脳血管造影、特に手押し造影時は、治療室外へ出る。