※順不同。結論やポイントのみを述べています。成書、参考論文をご参照ください。
SAH:subarachnoid hemorrhage
くも膜下出血
破裂脳動脈瘤
SAH unknown
<初回のCT>
・中脳周囲の脳槽にSAH
=PNSAH: Perimesencephalic non aneurysmal SAH
(23-64%転帰良好)
・びまん性あるいは脳底槽前方に局在
・初回のDSAで出血を特定できない20%
・発症6週までに44%で同定(報告レベル)
動脈瘤と妊婦
日本脳卒中(2012-2013)の報告では
出血>虚血(出血は虚血の3倍)
<出血の原因>
- 動脈瘤破裂(20%で最多)
- 動静脈奇形破裂
破裂は妊娠第三期と分娩後24時間以降が多い
<虚血の原因>
1、RCVS
reversible cerebral vasoconstriction syndrome
2、静脈性梗塞
動脈瘤と高齢者
<破裂しやすい因子>
1、80歳以上
2、7mm以上のサイズ
3、内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤
SAH再出血のリスク
- 重度H&H3.4.5
- 大型動脈瘤( >10mm)
- 来院時収縮期血圧( 160mmHg)
- 初期脳室ドレナージ
- 脳室内出血
- 高血糖
- 1ヵ月以内の警告頭痛
(10倍も再出血リスクあり)
stroke 37: 2733- 2737, 2006
PLoS One 9:e99536, 2014
stroke 46: 2100- 2106, 2015
SAH後のシャント
SAH後シャントを要するのは、
- high Fisher grade
- 急性水頭症
- 入院中の合併症
- 再出血
- 後方循環脳動脈瘤
- 60歳以上
J Neurosurg 126: 586-595, 2017
SAHの危険因子
原因:脳動脈瘤、脳動脈奇形、脳動脈解離
危険因子:喫煙、高血圧、1週間に150g以上の飲酒
⇒くも膜下出血発症予防のために、禁煙、血圧コントロール、飲酒ないし禁酒が勧められる(推奨度A)
(脳卒中治療ガイドライン2021)
動脈瘤破裂とHDL-C高値と脂質低下薬の使用との間に逆相関
また、血糖降下薬の使用も動脈瘤は破裂しにくい関係性
治療について
破裂脳動脈瘤では再出血の予防が極めて重要であり、予防処置として、開頭による外科的治療あるいは開頭を要しない血管内治療を行うよう勧められる(推奨度A、エビデンスレベル低)
外科的治療が選択された場合には、原則的に出血後72時間以内の早期に行うことが妥当である(推奨度B、エビデンスレベル中)
脳卒中治療ガイドライン2021
最近の報告では、SAH発症後12.5時間以内に治療した場合、自宅への退院、12ヵ月後の生存など治療良好であった。(発症から治療までの時間と合併症との関連はなかった。)
JAMA Network Open 5(1): e2144039, 2022
SAH手術法RCT
ISATとBRAT
SAHに対する手術方法(clipping vs coiling)を比較した RCT
★International Subarachnoid Aneurysm Trial: ISAT
Lancet 360: 1267-74, 2002
Lancet 366: 809-17, 2005
Lancet Neurol 8: 427-33, 2009
Lancet 385: 691-7, 2015
★Barrow Ruptured Aneurysm Trial:BRAT
J Neurosurg 116: 135-44, 2012
J Neurosurg 119: 146-57, 2013
J Neurosurg 128: 120-5, 2018
J Neurosurg 132: 771-6, 2019
背景、デザイン、解釈は原文あるいは、脳神経外科速報 vol.32 no.1 2022.1.の破裂動脈瘤(よくまとまっている)をご参照ください。
ここで、覚えるべきは、概要と有意差があるものです。
ISAT | BRAT | |
複数施設 | 単施設 | |
最長follow | 18.5年 | 10年 |
クロスオーバー | 少ない | 多い |
mRS3-6 coil少ない | 1年後 | 1年後 |
死亡 coil少ない | 5年後 | ー |
再出血 coil多い | 14,18年後 | 10年後 |
再治療 coil多い | ー | 1,3,6,10年後 |
動脈瘤 閉塞率 clip良好 | ー | 3,6,10年後 |
・ISAT: coil群17%再治療要/大型動脈瘤、内頸動脈後交通動脈分岐部
<ISATサブグループ解析>
コイル塞栓術がよい←70歳未満、WFNSⅠ~Ⅲ、小型動脈瘤、後方動脈瘤
CARAT
The Cerebral Aneurysm Rupture After Treatment (CARAT)study
破裂脳動脈瘤におけるクリッピング術とコイル塞栓術の術後再出血を比較した研究
・術後30日後の再出血はコイル群で高い(約3%)
・術後1年でも高い(有意差はなし)
・再出血は治療1年以内
・コイル塞栓術で、約20%再開通、10%再治療要
・Risk:後方動脈瘤、10mm以上動脈瘤
Stroke 37, 1437-42, 2006
CLARITY
破裂脳動脈瘤の血管内治療
術中破裂4%←65歳未満の若年、高血圧がない、中大脳動脈瘤
血栓塞栓症12%←喫煙、10㎜以上の動脈瘤、ネック4mm以上
J-ASPECT study
コイル塞栓術とクリッピング術で比較
・コイルの方が、入院中死亡は多く、在院日数は少なかった。
・退院時mRS、医療費に差はなかった。
Circ J. 25;83(11):2292- 2302, 2019
破裂脳動脈瘤の塞栓術(JR-NET3)
・術中破裂 4.1%
・虚血合併症 4.2%
・再出血 1.2%
<術中破裂リスク>
女性、分岐部動脈瘤、 5 mm以下、緊急手術、局所麻酔、バルーンアシ ストテクニック
<虚血合併リスク>
poor WFNS grade、wide neck、ステントア シストテクニック
J Neurointerv Surg 12: 605-9, 2020
未破裂脳動脈瘤
破裂リスク
PHASES,UCAS,ERAPSEスコア
1)PHASESスコア:
5年間の破裂リスクを算出
2)UCAS Japan:
3年間の破裂リスクが算出可能
3)ERAPSE:
3年間と5年間の増大リスクが算出可能
1)Lancet Neurol 13: 59-66, 2014
2)Ann Neurol 77: 1050-9, 2015
3)Neurology 88: 1600-6, 2017
※試験では、項目と点数のある程度の把握が必要。例えば、どの項目で一番点数が高いかなど。
UCAS Japan
試験でも、臨床でも必須。
例えば10mm以上の脳底動脈先端瘤の年間破裂率は?で答える必要があるので。
(主要動脈瘤の%数値を四捨五入して動脈瘤の大きさに分けピックアップすると覚えやすいです)
破裂率0.95%/年
破裂リスク:
動脈瘤のサイズ(7 mm以上)
部位(前交通動脈瘤、内頚動脈後交通動脈分岐部動脈瘤)
形状(不整形)
径≦5mmの破裂率0.36%/年
破裂リスク:
SAH既往、治療不十分な高血圧、前交通動脈瘤
N Engl J Med 366: 2474-82, 2012
▼脳神経外科学会から
部位別、ブレブ付で何倍破裂しやすいか
▼確かにバイアスはありますので
解釈の例としては、こちらを参考に
(外部リンク)
あなたの動脈瘤、その研究では治療されていますよ。 (kimura4bestoperation.com)
SUAVe study
Small unruptured intracranial aneurysm verification study
径≦5mmの破裂率0.54%/年
全体の動脈瘤増大率は1.9%/年
増大リスク:
径≧4mm、多発、現在の喫煙、女性
破裂リスク:
径≧4mm、多発、高血圧、50歳未満
Stroke 41: 1969- 77, 2010
ISUIA
International Study of Unruptured Intracranial Aneurysms Investigators
北米・欧州の脳動脈瘤に関する大規模前方視的研究
多変量解析の破裂危険因子:
1、7㎜以上の瘤の大きさ
2、IC-PCと脳底動脈先端部瘤
Lancet 362: 103-10, 2003
ARETA study
破裂リスク:
高血圧、家族歴なし、単発、喫煙、径≧5mm、narrow neck、不整形、前大脳動脈瘤、前交通動脈瘤
J Neuroradiol 47: 292-300, 2020
治療介入
脳卒中治療ガイドライン2021
治療を含めた慎重な検討をすることが妥当(推奨度B)
①大きさ5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤
②5mm未満であっても、
A)症候性の脳動脈瘤
B)前交通動脈および内頸動脈-後交通動脈分岐部に存在する脳動脈瘤
C)Dome neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなど形態的特徴をもつ脳動脈瘤
UIATS
Unruptured Intracranial Aneurysm Treatment Score
患者因子、動脈瘤因子、治療因子の各項目が治療介入か経過観察かのいずれかに振り分けられて点数化。合計スコアが3点以上高いほうを選択することが推奨されている。
Neurology 85: 881-9, 2015
未破裂脳動脈瘤治療のメタアナリシス
血管内治療 | 開頭手術 | |
合併症 | 4.96% | 8.34% |
致死率 | 0.3% | 0.1% |
risk | 女性 | 高齢 |
糖尿病 | 糖尿病 | |
脂質異常症 | 喫煙 | |
心疾患 | 心疾患 | |
広頚動脈瘤 | 石灰化動脈瘤 | |
後方循環瘤 | 後方循環瘤 | |
ステント併用 | 経口抗凝固薬 凝固異常 |
JAMA Neurol 6:282-293, 2018
未破裂脳動脈瘤の塞栓術(JR-NET3)
・70%がadjunctive technique
(stent使用は22%)
・全治療合併10%、全虚血合併6%
・mRSスコア悪化伴う虚血性合併1.6%
・虚血合併は動脈瘤が大きいほど高い
・術中破裂最多は前交通動脈瘤
(通常1%が3%に)
・ステント併用の合併症は高い
(ステント非併用よりも)
Neurol Med Chir (Tokyo) 60: 55-65, 2020
使用可能なフローダイバーター
Pipeline Shield | FRED | |
部位 | ICA錐体部~ 床上部 椎骨動脈 | ICA錐体部~ MCA,ACAの近位部 椎骨動脈 脳底動脈 |
瘤径 | 最大径≧5mm | 最大径≧5mm |
neck径 | neck≧4mm dome/neck比<2 | neck≧4mm dome/neck比<2 |
ACA:anterior cerebral artery
MCA:middle cerebral artery
▼FDの詳細、エビデンス、治療の留意点
FD治療後分枝の閉塞率
フローダイバーター(FD)治療後の分枝閉塞率
眼動脈 10.5%
後交通動脈 10.7%
前脈絡叢動脈 0%
前大脳動脈 100%
FD不完全閉塞予測因子
1、60歳以上
2、瘤径最大15㎜以上
3、分枝がある
4、術直後ネック残存
5、以前留置された頭蓋内ステント
6、前方循環の遠位部
7、大弯側の動脈瘤
8、紡錘状動脈瘤
未破裂脳動脈瘤の抗血栓療法
(JR-NET3)
周術期抗血小板療法の施行率95%。
術前抗血小板薬:
aspirin、clopidogrelの2剤併用療法が 53%で主流。
術後抗血小板薬:
aspirin、clopidogrelの2剤併用療法が
46%で施行。
Neurol Med Chir(Tokyo)59: 247-56, 2019
脳神経外科速報 vol.30 no.1 2020.1. 4
非外傷性頭蓋内椎骨動脈解離
SAH 60%、虚血30%、頭痛7%
虚血・出血の再発
1998
虚血発症→虚血再発4.2%、出血再発3.4%
2003 SASSAY-JAPAN
虚血再発5%、死亡率虚血で5-8%、出血で20%
2009 SCADS-JAPAN
虚血発症→症状増悪7日以内9.6%
8-30日3.8%、30日以降1.3%
虚血発症→SAH(1.7%)で全て7日以内
SAH→30%再出血→半数死
脳卒中の外科 26:79-86, 1998
SASSAY-JAPAN若年世代の脳卒中の診断、治療、予防戦略に関する全国多施設共同研究(大阪:国立循環器病センター)91-95, 2003
SCADS-Japan 脳血管解離の病態と治療法の開発(大阪:国立循環器病研究センター)8-14, 2009
出血発症の解離性椎骨動脈瘤
(JR-NET3)
・治療の合併症20.2%
・術中のヘパリン使用率87.4%
・30日後のmRS0-2(予後良)59.1%
・トラッピング90.6%
・近位閉塞7.9%
・60歳以上、男性、全身麻酔、非専門医が手術担当すると予後はよくない(単変量解析)
・治療までの時間、全身麻酔、治療法、治療の結果、非専門医、術中ヘパリンの使用、ヘパリン導入のタイミングで、合併症は差がなかった
Neurol Med Chir (Tokyo) 59(1): 10-18, 2019