私は、口頭・実技試験は数回不合格を経験、最終無事合格しました。
毎回失敗しては、何がダメだったか試験の振り返りをしています。
試験のフィードバックはされませんので正確ではありませんが、たぶんココがダメだったと心当たりはあります。
不合格を経験したからこその教訓、これはした方がよかったという点をご紹介します。
口頭・実技試験概要
近年、過去問は公開されていません。よって、詳しく述べることはできません。
あくまでも、2022年度の概要です。
(症例、器材実技、Eveの3関門、各20分)
『A関門』症例問題
2題の症例について病歴と写真を呈示し、その診断、治療法について。
『B関門』器材実技
『C関門』Eveを用いた手技
私の不合格の原因
勉強不足
初めての受験時は、筆記試験を重点的に行っていました。
口頭・実技試験としては、
・解剖の本
・超入門脳血管内治療の本
・実臨床の復習(デバイス使用仕方など)
を熟読しましたが、特別な訓練は行いませんでした。
具体的に何の勉強が足りなかったか。
dAVFの経験が不十分だった
経験した症例も少数。血管の解剖学的位置関係や、例えばCSdAVFのルートとして浅側頭静脈(STV)があるとか、そこまで把握していませんでした。
CSdAVF:cavernous sinus dural arteriovenous fistula
STV:superficial temporal vein
しかし経験した症例が少数である受験生でも合格できている。
それは、dAVFの血管構造、治療の概念、アプローチの仕方を理解できているから。
書籍で学び、少数の症例でもそれを大事にし、掘り下げて勉強しているから。
実地訓練不足
2回目以降の受験は、妊娠・出産の時期と重なり、実臨床の訓練が十分にできなかった。
Eveを使用した訓練
Eveはヒトの血管を模して精巧に作られている血管内治療対応のデモ器です。
一度体験してみるとわかるかもしれませんが、トルクの伝わり具合や、カテーテル/マイクロカテーテルの挙動が、ヒトの血管のそれとはやはり異なります。
例えば、カテーテル誘導は、やや硬く抵抗がある、jump upしやすいなどです。
臨床でそれなりに数をこなしており、上級レベルであれば問題ないのでしょうが、初級レベルであれば、Eveを一度でも経験しているのと、していないのとでは、違うと思います。
治療の立ち合いなどで、Eveを取り扱う業者さんと出会う機会があれば、体験できるか聞いてみるといいと思います。
私が合格した年度には、試験前に2度Eveを経験させていただきました。短時間でしたが、マイクロカテーテル操作方法を確認でき有意義でした。
おかげで、臨床から少し離れていた期間においても、勘を取り戻すことができ、試験では平常心を保つことができました。
一回で合格するためにすること
当たりまえかもしれませんが、口頭・実技試験対策をしっかり行っておくことです。
具体的に何をすべきか挙げます。
A,B,C関門の流れをおさえる
『A関門』症例問題
『B関門』器材実技
『C関門』Eveを用いた手技
A関門:実地で必要とされる応用的機転を重視し、読影力、判断力、方法論などについて、総合的な脳血管内治療医としての臨床力を問うています。
採点のポイントはここまで答えられれば満点という基準を作り、その答えが出ない場合、ヒントを与えて気が付けば少々の減点、かなりつっこんだヒントや助け舟が必要であった場合にはさらに減点となり、診断・読影の明らかな誤りや、戦略において明らかに危険や不適切な回答があった場合には大幅な減点となります。
B関門:採点のポイントは、設問への答え、正しい器材の組み立て、使用法、順序、実際の取り扱い方を評価しています。
C関門:実際の脳血管内治療を術者として行う際に問題があるかどうかを特に重視しています。基本的手技を獲得しているか?試験という特殊な場でも冷静に普段通りの技量を発揮できるか?を確認することが主な目的。
JNET Vol3 No.1 May 2009
シミュレーションする
適当な問題を作ったり、勉強会グループで共有したりする。
ひとり二役でよいので、実際声に出して答える練習をする。
本番では、集中し画像をよく見る。
トラブルシューティングをおさえる
例えば、動脈瘤治療中に動脈瘤が破裂した場合、
・穿孔したマイクロカテは抜かない
・バルーンでネックまたは近位動脈を閉鎖
・血圧を下げ、必要に応じヘパリン中和
・バルーンで遮断しながらコイル塞栓を継続
(穿孔したマイクロカテより動脈瘤外にコイルを挿入した後に、穿孔部位をはさむようにコイルを動脈瘤内外に留置する)
・1本目のマイクロカテをそのまま残して、もう一本カテを誘導してコイル塞栓を継続
・親血管を遮断しつつ開頭手術
・母血管閉塞に切り替える
(側副血行路が良好であれば)
その他、血栓症、コイル母血管へ逸脱、コイルアンラベルの対応、血管解離、血管破裂したときの対処法についておさえます。
『CEP(continuing education program)テキスト』(学会総会の講義テキスト)や下記参考書をご参照ください。
デバイスに慣れる
治療で使用したデバイスまたは未使用開封済のバルーンカテーテルやトルク、Yコネなどを入手し、プレパレーション・使用方法を確認する。
操作に慣れる。カテ室が空いているときに練習する。
ハンズオンセミナーに参加する
ここ数年は新型コロナの影響で、開催が中止になりましたが。
器材に実際触れ、専門医から使用方法を直接ご指導いただける貴重な機会です。各学会ホームページをご覧になり、ぜひご参加ください。
日常の血管内治療に携わり、
ひとつひとつの症例を大事にする
日常の血管内治療そのものが非常に重要と痛感しました。わからないことは上級医に質問しましょう。
そして、ひとつの症例を深く学びます。
具体的には、
・解剖
・治療戦略、考え方
・自分であれば、どう治療するか
・術者の手の動き・操作
・手術の振り返り
脳神経内科所属で経験症例が少ない場合は、
学会や脳血管内治療 ブラッシュアップセミナーのWEB配信、Oben(https://www.oben.jp/)、オンデマンドで利用できる動画サイトをうまく活用するとよいでしょう。
参考書
『「超」入門 脳血管内治療』
『脳血管内治療トラブルシューティン グ:脳虚血編』
『脳血管内治療 トラブルシューティング:脳動脈瘤編』
『各種デバイスの添付文書』
まとめ
本番は緊張しますが、それは他の受験生も同じです。
日常治療で行っているように、できるだけ平常心を保ち、心を落ち着かせて臨むことができればよいですね。