そんなギモンにお答えします。
外科志望医が初期研修で内科をおろそかにしてはいけない理由
それは
- 内科を研修する機会は、初期研修期間のみ
- 外科医でも、内科の治療を行う
からなんです。
詳しく説明します。
内科研修の機会は初期研修限定
もちろん、今後の医師生活で、内科の勉強をしないわけではありません。
しかし、外科医に進む場合、じっくりと内科の基礎を学ぶのは、
基本的に初期研修の期間だけです。
外科医でも、内科の治療が必要
脳神経外科入局例
例えば、脳神経外科に入局すると
言わずもがな、脳神経外科の基礎や臨床を学ぶことになります。
上級医から学ぶことと言えば、主に脳神経外科の内容(解剖、診断、治療、手術)です。
よって、内科について、専門的に学ぶことはほとんどない。
(し、基本的に教えてもらえない!!)
しかし、内科の知識は必須です。
例えば、
80歳脳梗塞患者の主治医となったとしよう。
脳梗塞に対する治療は保存的加療。
入院中、患者が肺炎となり治療が必要になった。
点滴オーダーできますか?
絶食にしたとき、輸液の種類・回数は?
喀痰の培養を出して、敗血症疑いなら血液培養をして、
抗生剤の種類は?用量は?どうしますか?
脳卒中入院患者に多い内科的合併症
- 肺炎
- 尿路感染症
入院中脳卒中患者の約85%に合併症を認め、呼吸器感染症22%、尿路感染症24%が多い。
理学療法兵庫 No.26 20-28 (2020)
です。
これらに対して、自ら治療を行うことになります。
高齢患者であれば高頻度で感染症の治療が必要になり、
自分は内科医なのかしら、と思うほどです。
もちろん、肺炎による心不全、血糖コントロール等
他科にコンサルトし、専門的に治療を行っていただくことも多いですが、
初期対応は主治医になります。
後期研修医であれば、まだ内科的管理に不慣れなこともあり、
上級医から、点滴の指示もいただくでしょうが、おおまかな内容だけです。
自分で勉強する必要があるんですね。
また、脳卒中発症予防としては、
血管危険因子、つまり、高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理・治療介入となり、
どのような薬でどの基準値でコントロールするかを知らないといけない。
だから、ある程度、内科研修で基礎知識・重要ポイントをおさえておく必要があるんです。
内科で習得すべきポイント
内科にもいろいろな専門分野がありますが、それらを事細かく学ぼう
というわけではないのです。
まずは、救急科でも大事にされる『ABCD』をおさえましょう。
ABCDとは
- A:Airway気道
- B:Breathing呼吸
- C:Circulation循環
- D:Dysfunction of CNS意識
具体的に学ぶこと
A気道確保
挿管を含む気道確保
B呼吸管理
呼吸数
視診・触診・打診
聴診の仕方・評価
動脈血液ガス分析
経皮的酸素飽和濃度
画像評価
呼吸器の設定法
C循環管理
血圧・脈拍数などバイタルサイン
血液循環量、In・Outのバランス
心電図の読み方
輸液の種類・量
栄養管理
血液データ分析
肝機能・腎機能評価
電解質異常
血糖コントロール
D意識評価
意識評価
神経診察
画像評価
+α
体温管理
感染症に対する抗生剤
薬の知識
疾患ごとの診断・治療
これらが全てではありませんが、参考にしてください。
自分のノート・iPad管理
内科で必要な基礎知識を自分なりにまとめましょう。
手書きでもデジタルでも何でも構いません。
例えば、輸液の組成は、テキストやリーフレットに種類ごとにまとめた表があります。
高頻度に使う薬の種類・用量など。
貼り付けていきましょう。
自分ノート作成をオススメしますが、テキストへの書き込みでもOK。
研修し新たな学びがあれば、どんどん追加していきましょう。
プロブレムリストの作成
私自身、内科を研修し、”論理的に考えること”を学びました。
それを深め、考えることがおもしろければ、内科向きでしょうか。
何科においても、このプロブレムリストは大事です。
患者さんの問題点を列挙・整理し、詳細に書き出します。
この、プロブレムリスト作成の練習をすべきです。
はじめは、上級医に教わりながら、自分で作成してみて、添削していただきましょう。
アドバイス
初期研修で内科をしっかり学ぼう
外科に興味があって、志望科を長期履修したい!
気持ちはわかりますし、必須科目を修了していれば、ローテート先選びは自由です。
ただ、
初期研修では内科をしっかり習得しておくべきなんです。
(入局すれば、選択科は嫌というほど、学べますので。)
過度に心配しなくてよい
上記で、内科での研修がいかに大事かを語りましたが、過度な心配は無用です。
わからないことは調べる・聞く・まとめる。
そして上級医に質問する。
それを続けていけば、経験を積むごとに自分のものになり、
まとめたものを参照しなくても、できるようになります。
また、新たに不明なことが出てくれば、調べればよいのです。
医師としてのモラルを大切に
初期研修で、様々な科をローテートしますが、医師としてはじめて患者さんを担当します。
診療の知識・技術のみならず、患者さん・ご家族・周りの医師・コメディカルへの対応など、
幅広く学び、成長してください。
最後に
初期研修は、志望科以外を学べるチャンス。
色々なことを吸収し、学んでくださいね。