脳卒中専門医が解説します。
本記事では、試験概要・私(脳神経外科)の受験対策法・使用した書籍についてお話します。
いち個人の体験談・見解としてご参照ください。
試験概要
120問全問「共通カリキュラム」からの出題となります。(領域別カリキュラムからの出題はありません。)
詳細については、各自ホームページをご確認ください。
日本脳卒中学会 ⇒会員専用ページへ
試験内容
近年、過去問は公開されていません。そのため、ここに詳細を記載することはできませんが、
概要としては、
・共通問題は脳卒中全般の問題。一問一答だけでなく、症例問題も含まれる。
・症例問題で、診断・治療法が問われる。
問題では、脳卒中に関連する問題として頻出問題・項目があり、必ずおさえておいた方がいいものがあります。
<おさえておくべき項目>
・脳の解剖と機能
・血管支配領域
例えば、線条体動脈、前脈絡叢動脈、視床動脈の支配領域、出現症状は頻出です。
・脳卒中の病型
・脳卒中病態生理
・脳卒中の診断・治療
・脳卒中再発予防
・リハビリテーション
・予後スケール
・脳卒中の疫学
▼具体的なポイントは別記事でまとめます。
(※自身の復習のためにまとめたもので、必要十分ではございません)
私の対策法
基本的に最近の過去問がありませんでした。
周りに勉強会グループがあればよかったのですが、見つけられませんでした。
ですので、独学で下記を勉強しました。
1模擬問題を解く
脳卒中学会のホームページから会員専用ページに入ると、専門医試験概要の中に数問ですが例題があります。
必ず目を通し、自分の解答を用意しましょう。
調べれば解答できますが、受験生が周りにいれば、解答を確認し合うとよいでしょう。
2脳卒中専門医試験問題・解説集
本テキストの内容はかなり古い(2013年)ですが、全く同じ問題も出題されていました。
解剖・機能・病態・診断など数年経っても変わらない事項はおさえましょう。
治療や疫学では、最新と異なる部分があります。脳卒中治療ガイドライン2021(最新)を確認しましょう。
3脳卒中治療ガイドライン2021
必須です。最低限、各項目の見出し部分はおさえましょう。
可能であれば全体に目を通し、最新トピックがおさえられるとよいです。
例えば、
脳梗塞急性期の抗血小板療法について、
抗血小板薬2剤併用(アスピリンとクロピドグレル)投与は、発症早期の軽症非心原性脳梗塞患者の、亜急性期(1ヵ月以内を目安)までの治療法として勧められる
(推奨度A、エビデンスレベル高)
シロスタゾール単独投与や低用量アスピリンとの2剤併用投与は、発症早期(48時間以内)の非心原性脳梗塞患者の治療法として考慮してもよい
(推奨度C、エビデンスレベル中)
4適正治療指針
下記、脳卒中治療として示されている適正治療指針(最新)を確認しました。
・静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第3版
・経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第5版
・頭蓋内動脈ステント(動脈硬化症用)適正使用指針
・頭蓋内動脈ステント(脳動脈瘤治療用Flow Diverter)適正使用指針 第3版
・潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き
tebiki_seninsei_noukousoku.pdf
・植え込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き
高リスク塞栓源心疾患はおさえましょう。
・COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き 第4版
▼いずれも脳卒中学会のホームページから参照・ダウンロードできます
ガイドライン・各種指針・手引き・推奨 | 日本脳卒中学会 – The Japan Stroke Society
その他
CEP
脳神経血管内治療専門医試験の内容を勉強しました。
具体的にはCEP(Continuing Education Program)テキストを読みました。内容的に通じるところがあると考えたからです。
しかし、脳神経血管内治療専門医試験の方が、エビデンスを数値まで覚える必要があります。確認程度でよかったかもしれません。
脳神経外科速報
毎年1月号に、脳神経血管内治療専門医試験対策の特集があります。こちらにも目を通しました。ムダではありませんでしたが、余裕があればでよいかも、と思いました。
脳卒中東京のエビデンスセミナー
トピックはマークしましたが、2022年度はここからはあまり出ていなかった印象でした。
結局、上記のうち
1、模擬問題を解く
2、脳卒中専門医試験問題・解説集
3、脳卒中治療ガイドライン2021
4、適正治療指針
をおさえることが大切かと存じます。
その他は、やることに越したことはないですが、時間的余裕があればする程度でよさそうです。
あとは、実臨床が勉強になるかと思います。
例えば、救急で脳卒中症例が来た場合、t-PA・脳血管内治療が適応になるのか。
抗凝固薬に対し薬は拮抗すべきか。
開頭手術をするのか。
静脈洞血栓症を疑えるか。
そのための診断としては何が必要でどう治療するのか。
エコー・SPECTは読めるかなど。
普段から意識して、わからなければ、最新のガイドラインを確認し覚えていく。
この作業も総じて大事かと思われます。
受験後の感想
難しかった印象です。
2択問題で1択は確実だが、もう1択が不確かな問題がありました。
脳神経血管内治療専門医試験とは、脳卒中の内容はかぶると思っていましたが
それよりも脳卒中の本質や基礎をおさえるべきで、(NOSやBBB含む)
どちらかというと脳神経外科専門医の血管関門レベルの問題に近かったのかもしれません。
また、脳神経血管内治療専門医試験にはない、脳卒中の疫学・介護・福祉・リハビリの問題が出題されます。
受験前に全てを網羅するのは困難かもしれませんが、近年の脳卒中関連でトピックになっている事項をおさえられるとよいと思います。
具体的には、
・厚生労働省ホームページ/地域包括ケアシステム
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
・厚生労働省ホームページ/特定疾病について
・脳卒中データバンクホームページ
などが、参考になります。
本番の心構え
心構えとしては、
・周りが正答できるような、必須問題を落とさないようにする
・マークシートのずれがないか確認する
・解ける問題から解く
・難問や2択で答えが割れそうな問題は重要視しない
などが、一般的注意事項でしょうか。
最後に、皆様の合格を祈念いたします。