冬の保育園ではやる病気のひとつに、ノロウイルス感染症があります。
保育園のクラス内でひとりがノロウイルスで嘔吐・下痢をきたすと、全員にうつるほど、感染力が強いウイルス感染症。
今回は、実際の経験をもとに、子どもがノロウイルスにかかったら親ができること、親が発症しない・あるいは軽症で済む方法をお話します。
本記事の著者:
脳外科女医ママ。
保育園で我が子が感染したが、親は発症せず。
正しい対策をすれば、症状が軽く済みます。
ノロウイルス感染症について
ノロウイルスとは
1968年米国のオハイオ州ノーウォーク町で発生した集団食中毒から発見されたウイルスで、小型球形ウイルスの一種。
通年みられますが主に冬に流行し、食中毒や感染性胃腸炎を引き起こします。
<特徴>
・感染力が強い
(少ないウイルス量でも感染)
・次亜塩素酸ナトリウムでないと
死滅しない
症状
主な症状は、嘔吐・下痢・腹痛。
突然の嘔吐から始まることが多く、激しい嘔吐の後、下痢症状が現れることが多いです。
嘔吐や下痢でウイルスを排出していくことで、通常2日ほどで回復します。
特に子どもの場合、個人差があり、症状が1週間続く場合もあります。
感染経路
手指や食品を介して経口感染し、ヒトの腸管で増殖。
家庭や保育園など集団生活をする場所で、ヒトからヒトへ飛沫感染、接触感染します。
その他、汚染された生の二枚貝や水の摂取。
糞便や吐物に大量のウイルスが排出されるため、汚物を処理する人の感染予防が大切です。
感染と発症は違う
感染:ウイルスに感染すること。無症状から有症状まである
発症:ウイルスに感染した結果、なんらかの症状が現れること
感染しても、発症しないことがある(不顕性感染といいます)
潜伏期間
潜伏期間(感染から発症までの時間)は1日~2日。
治療法
特効薬はなく、飲水、補液などの対処療法。
脱水症状がひどい場合、病院で輸液の点滴を行う必要があります。
下痢止め薬は、病気の回復を遅らせる可能性があり、使用しないのが望ましいでしょう。
登園の目安
明確には定められていないので、保育園や職場に確認しましょう。
ある保育園では、通常便が確認できてから24時間経過して登園許可がでました。
発症したらどうするか
小児科を受診し、診断、整腸剤や制吐剤の投薬がなされます。
保育園、職場に連絡をいれましょう。
子どものケア
<大事なポイント>
・脱水に注意
・胃腸を安静に
脱水に注意
一番は、脱水に注意することです。
脱水が重度の場合、唇が乾燥し、皮膚の張りがなくなり、ぐったりした様子で寝てばかりになります。
食事ができなくても、飲水はなるべくするように心がけましょう。
経口補水液(塩や糖入り)が望ましいとされていますが、お茶でも構いません。
嘔気があるときは、無理をせず、一気にたくさんの量を飲ませるのではなく、少ない量を頻回にとるようにしましょう。
胃腸を安静に
次に、食べられるときは、消化の良いものを摂取するようにします。
具体的には、お粥やうどんなどです。ゼリーやプリンなどの口当たりのよいものでも構いません。
ゆっくり寝て休息することも大切です。
家庭でできること
<大切な予防対策>
・手指のウイルスを極力へらす
・ウイルスを広げない
具体的には、
- こまめに手洗いをする
- 症状があれば食品を取り扱わない
- 糞便や吐物を適切に処理する
- 消毒方法を理解する
1、こまめに手洗いをする
手洗いは、手指に付着しているウイルスを減らす最も有効な方法です。
食事の前やトイレの後は、必ず手洗いをしましょう。
石けんを泡立てしっかり洗い、温水で流水し、清潔なタオルやキッチンペーパーでふきます。
※石けん自体には、ウイルスを死滅させるほどの効果はありませんが、十分に泡立てて洗い流すことで、ウイルス量は各段に減ります。
2、症状があれば食品を取り扱わない
手指を介して感染するため、汚物を処理する親が食品を扱うことで、二次感染を引き起こす可能性があります。
症状がなくても感染している場合もあり、食品取扱者は十分な注意が必要です。
3、糞便や吐物を適切に処理する
<用意するもの>
使い捨てエプロン
マスク・手袋
ペーパータオル
ナイロン袋
次亜塩素酸ナトリウム
<次亜塩素酸ナトリウムの作り方>
塩素濃度200ppm~
家庭用キッチンハイターで作ることができます
▼コチラがわかりやすいです
家庭でできるノロウイルス対策について(消毒液の作り方・嘔吐物の処理)/佐世保市役所
換気下。処理する場所の近くにビニール袋を置き、口を広げておきます。
床に糞便や吐物が飛び散った場合、エプロン・マスク・手袋を着用し、汚物をペーパータオルで静かにふき取ります。
次に、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように床をふき取り、その後水拭きをします。
オムツや、ペーパー、汚染手袋は、ビニール袋に入れて、袋の口を閉じます。
※ノロウイルスは乾燥すると、空気中に漂い、口に入り感染することがあるため、糞便や吐物が飛び散ったら、速やかに処理しましょう。
4、消毒方法を理解する
調理器具を消毒する
汚染された調理器具は、洗剤で洗った後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)に浸します。あるいは、熱湯1分以上に浸します。
リネンや衣類を消毒する
汚染されたリネン、衣類は、まず流水により洗い流します。
次に、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)に30分以上浸します。あるいは、熱湯1分以上に浸します。
その後、洗濯機で通常通り洗濯します。
ドアノブや日用品を消毒する
次亜塩素酸ナトリウムでふき取ります。
※次亜塩素酸ナトリウムに、金属腐食性がありますので、消毒後は薬液のふき取りも行いましょう。
実際の経験
ノロウイルスは、感染力が強い性質上、子どもが感染した場合、兄弟や親にうつらないことは極めて難しいです。(ほとんどの場合、感染します。)
しかし、ウイルス量を最小にすれば、たとえ感染しても、発症を軽く抑えられます。
我が家では、保育園に通う2児が感染しました。小児科に行くと「どこの保育園でも大流行。親が、症状が強くてしんどいよ」と。
子どもは、嘔吐で発症し、1週間下痢が続きました。しかし、親は発症せず。
約10日胃腸炎の子どもにつきっきりで、頻回の汚物処理をしたにも関わらず。
実際の対策としては以下を行いました。
- 手洗いの徹底
- 糞便、吐物の適切な処理
- 調理をしない
- こまめな飲水とプチ絶食
- 定期的にドアノブを消毒
手洗いの徹底
こまめに手洗いを実行しました。
糞便、吐物の適切な処理
手袋着用、換気、次亜塩素酸ナトリウムあるいは熱湯での消毒、袋の口を閉じる。
これらをしっかり行いました。
調理をしない
子どもが罹患中、食事は作らず、レトルトやお茶漬けで済ませました。
こまめな飲水とプチ絶食
子どもも親もこまめな飲水を心がけました。
実は、絶食にすると、胃腸に刺激が入らず、胃腸を安静にすることになり、早く治すことができます。
ですので、健康な大人の場合、食欲不振があれば、絶食してもよいです。
体調が回復すれば、お粥など消化のよいものから徐々に摂取するとよいでしょう。
子どもの場合、絶食が数日続くと体力消耗し、すぐに脱水になってしまいます。
無理に食べさせる必要はありませんが、可能なら消化の良いものを少しでもとれると安心です。
定期的にドアノブを消毒
トイレや部屋のドアノブや電気のスイッチなど、普段よく触れる部位を定期的に消毒しました。
おもちゃの消毒もすれば、なおよいです。
おしりかぶれ防止
我が家の対処法になりますが、
- 下痢をしたら、風呂場にて温水で洗い流す
- 手でこすらない
- 清潔タオルで軽くポンするだけ
- 亜鉛華軟膏を塗る
この方法で、かぶれなしでした。
まとめ
・ノロウイルス胃腸炎について
・子どもがかかったときの対処法
・実際の経験と予防策
についてお話しました。
ノロウイルス胃腸炎は、自身に症状があるときは、とてもしんどく、子どもの看護や汚物処理も大変です。
なにより子どもがかわいそうで、心折れそうになりますが、時間とともに治っていく病気です。
私の経験が、どなたかの、お役に立ちますように。
参考:
ノロウイルスに関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
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