皆さまの職場は、働きやすい環境ですか?どんな工夫をされているでしょう。
主治医制・チーム制、それぞれにメリット・デメリットがありますよね。
今回は、育児中女医が、チーム制の問題点と魅力について語ります。
コチラも>>当直の負担を減らすには?
医師の働き方改革概要
1、医師の働き方改革
労働時間短縮・健康確保の措置:
労働時間上限設定・時短計画案2、各医療関係職種の専門性の活用
医師の負担軽減:
タスクシフト・シェア3、地域の医療提供体制の確保
地域医療構想の実現・
引用:働き方改革をめぐる最近の動向
外来医療機能の明確化
目標:誰もがいきいきと医療に従事でき、よりよい質の医療の提供へ
タスクシフトの一例:
脳卒中診療看護師の特定行為
働き方改革に関する情報|いきサポ
いきいき働く医療機関サポートWeb
今回は、医師の働き方改革の中の「業務の見直し」についてです。
主治医制・チーム制の2択ではない?
主治医制 | 一人の主治医が一人の患者を全て担当 |
チーム制 | 複数名の医師が一人の患者を担当 |
大まかには2種類ですが、さらに主治医制・当直医制・複数主治医制・チーム主治医制に分けられます。
主治医制 | 休日・夜間を含め何かあれば 主治医が対応 |
当直医制 | 主治医は一人だが、 休日・夜間は当直医が担当 |
複数 主治医制 | スタッフ医師が一人で あとは初期・後期研修医 |
チーム 主治医制 | スタッフ医師が複数おり、 完全交代制 |
結果:最も満足度が高かったのはチーム主治医制(90%)。一方、実現が難しいという意見も多かった。
引用:主治医制に関する医師1,883名のアンケート結果
主治医制の例
私の脳神経外科は主治医制です。
例えば、くも膜下出血の患者が緊急入院、夜間に急性水頭症(脳室内に髄液がたまり意識障害をきたす)になって、脳室ドレナージ(髄液を抜く手術)が必要!となったとき。
夜間緊急ゆえ、初期対応は当直医がしますが、主治医が呼ばれ手術します。
デメリットは、主治医は、重症患者をかかえていれば365日オンコール体制であること。術前説明を主治医が担当する場合は、説明・手術が遅れる可能性も。
各々のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
主治医制 | 治療方針が一環 責任の所在明確 やりがいがある | 家庭と両立困難 主治医の負担大 |
当直医制 | 夜間・休日を 任せられる | 処置について 主治医に伝わらない |
複数 主治医制 | 教育できる | 主治医制に近い負担 |
チーム 主治医制 | 他医師を頼れる フレキシブル 家庭と両立可能 | 責任の所在が不明 患者の理解が必要 治療方針の差異 |
デメリットを少なくするには
どの制度も、よりよいものにするには、デメリットをできるだけ解消する手立てを考えればいいのではないでしょうか。
当直医制:
処置について主治医に伝わらない
→主治医への報告を徹底する。そうすれば、主治医は、お手すき時病棟に足を運ぶ。
チーム主治医制:
責任の所在が不明
→責任者を一人決める。
治療方針の差異
→全体でミーティングを行う。
グループラインやTeamsを活用し、担当した医師から全体へ、申し送りをする。患者にもチーム主治医制の説明をする。
当直医制×チーム制ってどう
私は、この4つの型いずれかに必ずしもあてはめる必要がないのではと思います。柔軟な考え方で、それぞれの体制のいいところ取りができないでしょうか。
例えば、当直医制×複数主治医制(スタッフ2名)を考えてみます。
血管内治療チームのA指導医、B中堅医師、C研修医がチームとなったとします。主治医は3名、責任者はB医師。
チーム全体で密にカンファレンスを開き、患者さんの治療方針を決定・周知します。中堅医師も研修医も、治療法が学べて教育としてもメリットあり。
患者さんへの挨拶は全員で、あるいはB医師からあらかじめ説明し、各々が挨拶しても。回診は各自が違うときに(全員一緒でも)。術前術後の説明はB医師が行い、全員同席。
休日・夜間は基本的に当直医が対応(当直医制)、連絡はB医師へいくので、あわせてA医師、C医師にも周知される。急変・追加処置が必要であれば駆けつける。
休日のスケジュールをシェアすれば(プライベートをオープンにする必要はなく、不都合なら×をつけるだけ)、A,B,Cの誰かが患者を回診することができる。
主治医制より、ワークライフバランスが叶えられそうですよね。当院神経内科は、このようなチーム体制をとっています。
理想的だが問題も多い
チーム制の問題点
不公平が生じないか:C研修医ばかり休日出勤することは避けるべき
→上級医も同等に出勤するなど、バランスをとる必要がある。(現状、どの科も休日に上級医も研修医も出勤していますね…)
不満が生じないか:B医師が手術を担当したのに、術後管理をA、C医師が行うことに対して、理解を得られるか。(もちろんB医師も術後管理をするが)
→助け合いの精神・協力が必要。C研修医が手術をしたら、上級医が補う。A指導医が手術をしたらB、C医師が術後管理を手伝う。
当直制の問題点
病院の規模により不可能:中小規模の病院では、当直医は他科の医師が担当することがあり、当直制ができない。患者に何かあれば、直接主治医コール。
→看護師・当直医への申し送りを工夫する必要がある。あらかじめ指示オーダーを出しておく。コール基準を設ける。
外科は当直制にできない可能性:手術を担当した限り、術後管理は主治医が行う。たとえ当直医が初期対応しても、何らかの追加処置が必要になれば、基本呼ばれる。
→完全交代の場合は、別の医師が全ての追加処置を担当するので、呼ばれないが、マンパワーがいる。手術は主治医が完投するのか?時間で交代するか?によっても異なる。
(現状は、主治医が最後まで手術を行い、術後説明・管理もするため、主治医制が多く、適しているとの考えも多い。)
主治医制の問題点
術後管理で休日の出勤は当然:金曜日に手術をしたら翌日の出勤は必須。
→これは変えられない。ただし、チーム制・当番制にすると、出勤不可なときに助かる。
全体の問題点
意見の不一致:一人ひとりの意見が違うため、すり合わせるのが難しい。
→やってみてPDCAサイクルで、改善していくしかないが、まずは、従業員(医局員)がどのような思いなのか、ヒアリングをすることが大切だと思う。
柔軟な考え方で
一つの意見ですが、外科は、主治医制を主体としつつ、休日は当番医が回診する、あるいは複数主治医制が妥当でしょうか。
下記工夫例1)のように、主治医制×時間で交代する方法も。工夫例3)のように、チーム制×当番制で業務を分担する方法も。
<必要なこと>
・チーム全員への申し送り・情報共有
・患者への周知・理解
・規則作り・担当割り振り・勤務管理
・医師同士の相互扶助・信頼関係
移行は簡単ではありませんが、各病院・診療科で、希望・実態を把握し、最適案を検討・実践すべきです。
実際の取り組み例
工夫例1)ある病院の脳神経外科
・主治医制だが柔軟に対応
・当直明けの勤務は昼まで
・当直明けに担当手術を入れない
・当直で手術になっても時間で交代
・当直明けの呼び出しなし
・帰宅後は他医師へ引き継ぐ
・オンコール・当直・待機を平等化
・カンファレンスは朝全員で
・情報共有ノートを活用
→規則が明確で働きやすい環境
工夫例2)当院の救急科
・チーム主治医制
・責任医は1名決定
・責任の所在は明らか
・休日・担当外は完全オフ
・交代なので呼び出しなし
・朝定時に必ず申し送り
→患者の治療方針は全員が把握
工夫例3)飯塚病院総合診療科
・スイングチーム制
(入院患者を当該チームに割り振る)
・ナイトシフト制(当直制)
・休日当番制
・時差出勤スタッフの配置
・教育チーム制
→業務削減でQOL向上
その他工夫例:好事例集
育児中外科医の視点
育児中外科医が、主治医制が困難だと思うのは、主治医の負担が大きいこと。
手術を完投せず、定時に終われば、術者として任せてもらえません。(そのため短時間手術を担当することが多いですが、長時間手術に奮闘する女医も)
ですので、キャリアは中断し、モチベーションも下がり、離職もします。(もちろん、時短勤務・転職など色々な働き方の選択肢はあります)
外科医として主治医をもつ、イコール手術を完投し、術後管理を行い、緊急呼び出しもあるということ。さらに当直もある。
当直で対応した患者の主治医になるシステムだと、当直明けもフル稼働。
子育てを一部外部委託しても、想像を超える努力・忍耐が待っています。仕事と子育て、どこかで妥協しながら、折り合いをつけているのが現状。
職場の理解や助け合いの精神は必要ですが、皆自分の仕事で精一杯なのです。
チーム制は、タスクシェア・分業・相互扶助ができ、導入されるととても助かります。
女性医師の活躍を推進するだけでなく、男性医師も働きやすくなれば、プライベートが充実し、育児にも参加できます。さらに、質の高い医療・増員に貢献し、良い循環が生まれるでしょう。
まとめ
主治医制・チーム制のメリット・デメリット・問題点について考えました。
ヒアリングをもとにした、型にあてはめない柔軟な考え方で、よりよい職場環境になることを望んでいます。
続きは>>医師の働き方改革|当直負担軽減
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