育児

男性医師の育休取得率が低い理由。問題点と解決策を女医が考えました

2022年10月1日産後パパ育休(出生時育児休業)が施行され、男性育休取得を推進している現在。

しかし、男性の育児休業(育休)取得率は13.97%男性医師に限ると2.6%

本記事は「男性育休を取得する方がひとりでも増えれば」という思いで、脳外科医ママ(夫育休経験者)が書きました。

<内容>

✓男性育休の基礎知識
✓男性医師の育休取得率
✓取得率が低い理由
✓問題点と解決策

育休の基礎知識

育休はいつ・どれくらい取れる?

育休は男女ともに、法律で定められている制度。原則1歳未満の子どもを養育する従業員が、勤務先に申し出ることで、利用できます。

男性は、配偶者の出産予定日から子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで取得できます。

<取得できない条件>

・雇用されている期間が1年未満
・1年未満に雇用関係が終了
・週の所定労働日数が2日以下

産後パパ育休(出生時育児休業)

2022年10月1日施行。子どもの出生後8週間以内の間に、育休と別枠で取得可能。

期間内は、4週間までの休業を2回に分けて取得できます。

産後8週間後の育休についても、最長1年間を2回に分けて取得できるようになりました。

さなえ

育休の取り方がフレキシブルに

・申し出は、原則休業の2週間前まで

・2回に分割取得する場合、まとめて申し出る必要がある

・希望があれば、休業中の就業が可能(上限あり)

▼さらに詳しく
厚生労働省より
000789715.pdf (mhlw.go.jp)

マネコミ!より
【2022年最新】男性の育休はじつはメリットだらけ! 取得期間や助成金など、法改正も併せて制度の内容を解説

育休中の給付金

雇用保険に加入している場合、最初の6ヵ月は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」それ以降は50%。

この給付金からは、税金や社会保険料は引かれないため、給与のおよそ80%を受け取ることになります。

自営業、大学院生など対象外になることも。

無給とならないか、申請前に総務課へ確認しましょう。

▼さらに詳しく
Q&A~育児休業給付~ (mhlw.go.jp)

申請の方法

休業開始予定日の1ヵ月前までに申請。(産後パパ育休は、原則休業の2週間前までに)

総務課で必要な書類を確認し、提出します。

男性の育休取得率と期間

2022年男性育休取得率は13.97%で、上昇傾向ですが、まだ低い割合です。

男性医師に限ると、育休取得率は2.6%、非常に低いです。

育休期間は、2週間未満が約5割。1ヵ月~3ヵ月が約25%。

さなえ

現状は厳しいですね…

▼業種による取得率
令和3年度雇用均等基本調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

2023年4月から、従業員が1000人を超える企業は男性労働者の育休取得率等の公表が必要です。

001029776.pdf (mhlw.go.jp)

取得時期はいつが多い?

子の出生後8週間以内が最多(46.4%)。

この時期は、母体ケアが必要、メンタルが不安定、子どものお世話に慣れない時期なので、女性側としては助かります。

育休期間(2週間未満が多い)をあわせると、ほとんどの方が、「ママ産後のみの短期育休」を取っていることがわかります。

出典:
厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」
000851662.pdf (mhlw.go.jp)

厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」
0000174276_1.pdf (mhlw.go.jp)

なぜ取得率が低いか

職場が

・男性育休に対する理解がない
・男性育休を推奨しない

従業員が

・育休に対する知識が少ない
・育休を希望するが利用していない

育休希望者は、57.4%。うち利用しなかった割合は、37.5%。

理由は、

・収入を減らしたくなかった
・職場の育休取得への理解がなかった
・職場が取得しにくい雰囲気だった
・自分にしかできない仕事があった

出典:
2018年三菱UFJリサーチコンサルティング「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書

問題点

・労働環境
・職場の雰囲気
・個人の意識

労働環境

・過重労働
・人員不足
・当直もギリギリで回している
・他に代わる従業員がいない

基本、激務です。今の勤務体制に無理があれば、育休取得を考えることすらできません。

職場の雰囲気

・ブラック企業・医局
・会話ができない厳格な雰囲気
・相談できない人間関係

誰にも相談できず、周囲に遠慮して育休を申し出ることができません。

参考:医局がブラックすぎる。過酷な勤務をやめたい。

個人の意識

・男女共同参画の理解
・固定観念

上司も従業員も、男女共同参画の理解がない場合、育休取得者に対して、偏見が生まれ、育休を取りづらい環境になります。

家庭においても、家事・育児の協力体制が整いにくいでしょう。

数年前、男性後輩から「子どもが生まれました」と報告されました。

でも、「上司や教授には報告していない」というのです。

そのときは「そうなんだ…」としか言えませんでした。

(男性はプライベートを持ち込まず、仕事に邁進できるんだ。女性は妊娠・出産の報告は必須なのに)

なんて思っていましたが、違います。

「言えない労働環境・職場の雰囲気」が問題なのでは、と考えます。

・仕事は当然大忙し
・若手で研鑽を積む大事な時期
・育休を取らないのが当たり前
・言い出しにくい職場雰囲気

当時、後輩はどういう思いだったかはわかりません。

でも、ほんとうは育休を取りたいと思っていたとしたら…。

もし職場の雰囲気がよくて、

先輩から「3人子どもがいるよ、何でも相談して」

上司から「〇〇君、おめでとう。育休制度を利用してもいいよ」

と声をかけられたら?

決定するのは本人ですが、とてもありがたいですよね。

解決策

目標は、

「育休希望者が、育休を取れる」社会
「男女共同参画社会」への理解と協力

個人ができること

・取得について考える
・家族と相談する
・上司と相談する

職場ができること

・制度を周知する
・従業員の希望を聞く
・労働環境を整える 
・雰囲気をよくする
・育休を取得させる

個人ができること

取得について考える 

希望があれば、取得について積極的に検討しましょう。

もし、周囲に取得経験のある男性がいらっしゃれば、話を聞いてみてください。

家族と相談する 

育児は家族で行うもの。配偶者と相談してみてください。

上司と相談する 

ご自身、家族の結論をまとめ、上司に相談しましょう。

引継ぎや人事配置の都合から、早めに申し出るのが望ましいでしょう。

職場ができること

2022年4月~育休制度の企業側から従業員への通知・取得促進は義務化されています!

制度を周知する

まず、育休制度について周知をお願いします。

厚生労働省から、雇用環境整備、個別周知、意向確認に活用できる素材が公開されており、利用できます。000852918.pdf (mhlw.go.jp)

従業員の希望を聞く

上司の方は、従業員に声かけをし、希望を聞いていただければ幸いです。

従業員は、言い出しにくく、周囲に遠慮があるかもしれません。

労働環境を整える

当事者が育休中は、どなたかが、代理を行わねばなりません。

したがって、人員確保は必須です。そのためにも、労働環境を改善する必要があります。

勤務体制、勤務内容、当直回数、残業時間、人間関係、給与、福利厚生など、様々な問題を全面的に見直さねばなりません。

例えば、大学病院で働くと、激務にも関わらず、低賃金のため、アルバイトを兼務する場合がほとんどです。

アカデミックな機関ですが、長時間労働や収入の問題が、医局離れにつながります。

とはいえ、これらの改善はハードルが高く、すぐに解決できないのも事実。

働き方改革を推進している昨今、チーム制やシフト制の導入など、少しでも働きやすい職場環境が整うことを望みます。

参考:子育て女医が医局をやめ転職する理由

雰囲気をよくする

ヒアリングを行い、よりよい職場雰囲気作りに生かしてください。

セミナーへ参加し、専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。

代理を行う従業員へ配慮することはもちろん、育休取得者が疎外されることがないよう、見守っていただきたいです。

育休を取得させる

育休取得を広めることは、職場にもメリットがあります。

職場のメリットは男性医師育休のメリットと注意点 にまとめました。

困難な事情があるかもしれませんが、従業員が取得を希望する場合、快く対応していただければと思います。

<PDCAサイクル>

PDCAサイクルとは業務改善につながる考え方。

Plan:計画
課題を検討し計画を立てる

Do:実行
内容と問題点を記録する

Check:評価
どんな成果があったか

Action:改善
次の計画に生かす

育休を取得させたら、個人・職場にとってよかった点、見えた課題を検討し、フィードバックしてください。問題点を解決し、次につなげましょう。

厚生労働省の取り組み

30年度に85%取得を目標に設定

・制度の説明、資料提供
000851662.pdf (mhlw.go.jp)

・公表の義務化(2023年4月~)
001029776.pdf (mhlw.go.jp)

・育休取得状況の公表と評価

・両立支援のひろば
両立支援のひろば (mhlw.go.jp)

・中小企業向け
育児・介護支援を専門科がサポート
無料相談・セミナー
中小企業育児・介護休業等推進支援事業|パソナ |

・男性の育休取得促進事業(イクメンプロジェクト)
育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト

相談窓口

都道府県労働局に、育児休業制度の相談窓口が設けられていますので、ご利用ください。

育児休業制度等相談窓口、改正育児・介護休業法説明会、男性の育児休業取得促進等に関するセミナーについて|厚生労働省

男女共同参画について

「男女共同参画社会」って何だろう? | 内閣府男女共同参画局

まとめ

✓男性育休について
✓男性医師の育休取得率
✓取得率が低い理由
✓問題点と解決策

についてお話しました。

男女ともに、育児・仕事に参加するために。皆が生き生きと働ける環境をつくるために。

できることから始めませんか。

ABOUT ME
さなえ
さなえ
1、3歳児の脳外科医ママ。 女医の妊娠、育児に関する悩み、経験を共有し、解決法や楽しくできる工夫を発信しています。
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